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HPV(ヒトパピローマウイルス)とは?感染から異形成までの期間や症状について解説

がん以外の疾患

HPV(ヒトパピローマウイルス)とは?感染から異形成までの期間や症状について解説

HPV(ヒトパピローマウイルス)という言葉を聞いても、どのようなウイルスか分からない方は多いかもしれません。実はHPVは誰にでも感染する可能性がある身近なウイルスであり、放置してしまうとがんにつながる恐れもあります。

今回は、HPVの基本情報から感染経路、発がん性のある型、感染後に起こる変化、予防方法までを分かりやすく解説します。不安な症状がある方は、参考にしてみてください。

HPV(ヒトパピローマウイルス)とは

HPV(ヒトパピローマウイルス)は皮膚や粘膜に感染するウイルスで、主に性的接触を通じて広がります。性的接触のある女性の50%以上が生涯で一度は感染するとされており、非常に一般的なウイルスです。

HPVには100種類以上の型が存在し、すべての型が危険というわけではありません。しかし、その中のいくつかは子宮頸がんをはじめ、肛門がん、膣がん、咽頭がん、陰茎がんなどの原因となることが医学的に証明されています。特に子宮頸がんについては、ほぼすべての症例でHPV感染が関与していることが判明しており、女性の健康にとって重要な問題となっています。

参考:厚生労働省|ヒトパピローマウイルス感染症とは

参考:厚生労働省検疫所FORTH|ヒトパピローマウイルス(HPV)と子宮頸がんワクチン (ファクトシート)

HPVの感染経路

HPVは主に性器間の皮膚接触を通じて感染します。性交渉体験後まもなく感染するケースが多く、性交渉を経験するほとんどの男女は人生のどこかでHPVに感染するといわれています。中には何度も感染を繰り返す方もいます。

最も感染機会が多いのは性体験を始めた直後の時期です。重要なのは、HPVは性交渉における挿入の有無に関係なく、性器の皮膚同士の接触でも伝播することです。そのため、コンドームを使用していても完全には予防できません。

感染後、体内に侵入したHPVは一定期間潜伏します。健康な免疫システムを持つ人の場合、多くは自然に排除されますが、一部の人では長期間残り続け、細胞の異常を引き起こす可能性があります。

発がん性のある13種類の高リスク型HPV

HPVには発がん性の観点から「高リスク型」と「低リスク型」の2種類に分類されます。高リスク型は前がん病変やがんを引き起こす可能性があるのに対し、低リスク型は良性の病変(イボなど)を引き起こすことがあります。

現在、発がん性があるとされる高リスク型HPVは13種類あります。

【高リスク型HPV】16型、18型、31型、33型、35型、39型、45型、51型、52型、56型、58型、59型、68型

特に16型と18型は発がんリスクが非常に高く、子宮頸がん症例の多くがこの2つの型が原因とされています。高リスク型HPVに10年以上持続的に感染した場合、子宮頸がんや陰茎がんなどに進行する可能性が高まります。

ただし、高リスク型HPVに感染したからといって必ずがんになるわけではありません。ほとんどの感染は2年以内に自然消滅するため、過度な不安は不要です。

一方、低リスク型HPVに感染すると、尖圭コンジローマという良性のイボが性器に形成されることがあります。これは生命を脅かすものではありませんが、治療が必要になる場合もあります。

HPV(ヒトパピローマウイルス)に感染したら?主な症状

HPV感染の最大の特徴は、ほとんどの場合で症状がないことです。つまり、多くの人は「自分がHPVに感染している」と気づくきっかけがないまま日常生活を送っています。実際、ほとんどのHPV感染は症状や病的状態を引き起こすことなく自然に治癒します。

ただし、がんを引き起こす可能性のある「高リスク型HPV」が長い間(通常は数年以上)体内に居続けると、細胞に少しずつ変化が起こり始め、「異形成」と呼ばれるがんの一歩手前の状態になることがあります。

女性と男性では体の構造が違います。女性の性器は内側に入り組んだ形をしているため、一度HPVが入り込むとウイルスを追い出しにくい環境にあります。そのため、女性の場合は約10人に1人がウイルスを完全に排除できず、感染が長く続くことがわかっています。

医学的な研究では、子宮頸がんになった方の90~95%に高リスク型HPVの感染が見つかっており、高リスク型HPVに感染した場合、男性よりも女性の方が約175倍もがんになりやすいというデータもあります。

感染から異形成(がん化)までの期間

HPVに感染してから細胞ががん化するまでには、一般的に長い時間がかかります。前がん病変(異形成)を未治療のまま放置した場合に子宮頸がんに進行しますが、この進行には通常何年もの歳月を要します。

異形成とは正常な状態とがんの間に位置する移行段階です。軽度異形成(CIN1)、中等度異形成(CIN2)、高度異形成(CIN3)と段階的に進行します。

出典:厚生労働省|HPVワクチンについて知ってください~あなたと関係のある”がん”があります~

厚生労働省の資料によると、正常な免疫状態の女性でHPV感染から子宮頸がんに進行するには15年から20年かかるとされています。しかし、免疫力が低下した女性、例えばHIV感染症で未治療の方などは5年から10年たらずで進行する可能性があるため注意が必要です。

子宮頸がんの主な症状

子宮頸がんの最大の特徴は、初期段階では自覚症状がほとんどないことです。そのため、定期的な検診が非常に重要となります。

病状が進行すると、以下のような症状が現れることがあります。

  • 性交渉のときに出血する
  • 生理日以外でも出血する(不正出血)
  • いつもと違うおりものが増えた
  • 腰痛や下腹部痛が続く

これらの症状が見られる場合、すでにがんが進行している可能性があります。少しでも心配な症状があれば、速やかに婦人科を受診することをおすすめします。

陰茎がんの主な症状

男性もHPV感染によって陰茎がんを発症するリスクがあります。陰茎がんの初期症状としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 亀頭や包皮の腫瘤(カリフラワー状の隆起)
  • びらん(皮膚表面が赤くただれた状態)
  • 潰瘍形成
  • 出血や分泌物

これらの症状は痛みを伴わないことが多いため、自覚が遅れることがあります。違和感や変化を感じたら早めに泌尿器科を受診することが大切です。

HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染原因

HPV感染リスクを高める主な要因には以下のようなものがあります。

  • 低年齢での初めての性交渉:若い時期の性交渉開始は子宮頸部の未熟な細胞が感染しやすいため、リスクが高まります。
  • 複数のパートナーとの性交渉:パートナーの数が多いほど、さまざまな型のHPVに接触する機会が増えます。
  • 喫煙: 喫煙は免疫機能を低下させ、HPV感染の持続やがん化を促進する要因となります。
  • 免疫不全状態:HIV感染症などで免疫力が低下している方は、HPV感染のリスクがより高く、複数の型のHPVに同時感染していることも少なくありません。

これらの要因が重なると、HPV感染リスクや持続感染の可能性が高まるため、特に注意が必要です。

HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染予防にはHPVワクチン接種が有効

HPV感染を予防する最も効果的な方法は、HPVワクチンの接種です。現在、日本国内では3種類のHPVワクチンが認可されており、それぞれ予防できるHPVの型が異なります。

参考:厚生労働省|ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~

HPVワクチンの種類

現在、日本国内で使用できるワクチンは、防ぐことができるHPVの種類によって、2価ワクチン(サーバリックス)、4価ワクチン(ガーダシル)、9価ワクチン(シルガード9)の3種類に大別されています。それぞれのワクチンにつて説明します。

2価ワクチン(サーバリックス)

2価ワクチンは子宮頸がんの主な原因となるHPV16型と18型に対応しています。この2つの型だけで子宮頸がんの約70%を予防できるとされています。抗体の持続性が比較的長く、子宮頸がん予防に特化したワクチンです。

4価ワクチン(ガーダシル)

4価ワクチンは2価ワクチンの対象である16型・18型に加え、良性疾患である尖圭コンジローマの原因となる6型・11型にも対応しています。子宮頸がんの予防だけでなく、尖圭コンジローマの予防も期待できるのが特徴です。

9価ワクチン(シルガード9)

9価ワクチンは最も新しいタイプのワクチンで、16型・18型・6型・11型に加え、31型・33型・45型・52型・58型にも対応しています。これにより、子宮頸がんの約90%、尖圭コンジローマのほぼ100%を予防できるとされています。現在使用可能なワクチンの中で最も広範囲のHPV型をカバーしています。

HPVワクチン接種の効果

HPVワクチンはHPV感染や子宮頸部の異形成を高い確率で予防する効果が確認されています。厚生労働省の資料によると、HPVワクチンの接種によりHPV16型と18型の感染を90%以上、関連する前がん病変を約70%予防できるとされています。

ただし、ワクチンはすべてのHPV型をカバーしているわけではなく、すでに感染しているウイルスに対しては効果がありません。そのため、若い年齢での接種が推奨されています。

参考:厚生労働省|HPVワクチンの有効性について

HPVワクチンの公費助成

日本では、HPVワクチンは小学校6年~高校1年相当の女子を対象に定期接種が行われています。この年齢層の女子は無料でワクチンを接種することができます。

また、過去に積極的な勧奨の差し控えにより接種機会を逃した方々を対象としたキャッチアップ接種は2025年3月31日で終了しましたが、一定の条件を満たす方は2026年3月31日までの経過措置で公費接種が可能です。詳細は各自治体にお問い合わせください。

HPV感染のがん化が不安なら定期的にリスク検査を受けよう

HPVは多くの場合、自然に体から排除されますが、中には「高リスク型」と呼ばれる種類もあり、長く体にとどまると将来的にがんにつながることがあります。特に子宮頸がんは、初期の段階では自覚できる症状がほとんどないため、定期的な検査を受けることで早めに異常に気付けるという大きなメリットがあります。

現在、子宮頸がん検診でよく行われているのは「細胞診検査」です。子宮の入り口から少し細胞を採って顕微鏡で詳しく調べる検査で、20歳以上の女性は2年に1回の受診がすすめられています。
さらに、「病院に行くのは少しハードルが高い」と感じる方には、自宅でできるHPV検査キットも選択肢のひとつです。「サリバチェッカー」は、唾液を使ってHPVに感染しているかどうかを調べられます。病院での検査とあわせて活用すれば、より安心して体の状態を把握できるため活用してみてはいかがでしょうか。