「便に血が混じっている」「最近便が細くなった」「お腹の張りが続いている」。このような変化を感じたとき、「ただの痔だろう」「疲れのせいかもしれない」と放置していませんか?
大腸がんは初期症状が出にくい病気ですが、「便の色」や「便の太さ」には、がんのサインが隠れていることがあります。例えば、鮮血か黒っぽい血かといった「血便の色の違い」は、大腸のどこに異常があるかを見分ける重要な手がかりです。
この記事では、大腸がんの初期症状や、痔との見分け方、危険な便の特徴についてわかりやすく解説します。大腸がんは、早期に発見できれば治癒を目指せるがんです。記事内には「大腸がんリスクのセルフチェックリスト」も用意していますので、ご自身の症状と照らし合わせ、不安を解消するための参考にしてください。
目次

大腸がんは、初期段階では目立つ症状がほとんどありません。しかし、がんが進行するにつれて、便の状態やおなかの調子、体調などに変化があらわれることがあります。
大腸がんの症状としてよく知られているのが「血便」です。ただし、血便といっても見え方はさまざまで、便の表面に血液が付着していることもあれば、便全体に混ざり込んでいたり、トイレットペーパーにだけ血液が付くこともあります。出血が少ない場合は気づきにくく、健康診断などの便潜血検査で初めて指摘されるケースも少なくありません。
また、便の形の変化も重要なサインです。腸の内側に腫瘍ができると、腫瘍が大きくなるにつれて便の通り道が狭まり、「鉛筆状便」と呼ばれる細い便になることがあります。
排便習慣の変化も見逃せません。生活習慣が変わっていないのに、これまで規則正しかったお通じが乱れ、便秘と下痢を繰り返すようになったり、排便後もすっきりしない残便感が続いたりする場合は、医療機関に相談することを検討しましょう。
このような便の色や形、排便習慣の変化は、日常生活のなかで最も早く気づける体からのサインです。トイレを流す前のほんの数秒、自分の便の状態を確認する習慣をもつことが、大腸がんの早期発見につながる可能性があります。
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大腸がんが進行すると、腹痛やおなかの張りがあらわれることがあります。初期には自覚しづらいものの、腫瘍が大きくなると不快感や痛みとして感じられるようになります。痛みの程度には個人差がありますが、腹痛や違和感が長く続く場合や、残便感が続く場合は注意が必要です。
さらに腫瘍が大きくなって腸を塞いでしまうと、「腸閉塞」を引き起こすことがあります。腸閉塞になると、激しい腹痛や吐き気、嘔吐などの症状があらわれ、緊急の治療が必要になることもあります。
大腸の右側(盲腸、上行結腸、横行結腸など)にできるがんは症状があらわれにくい傾向がありますが、腫瘍がある程度大きくなると、おなかを触ったときにしこりのような硬さを感じることがあります。自分で触ってわかるほどのしこりがある場合は、すでに進行している可能性も否定できないため、速やかに医療機関を受診しましょう。
大腸がんでは、少量の出血が長期間にわたって続くことがあります。出血がわずかなため自覚しにくいものの、知らず知らずのうちに貧血が進行し、めまいなどの症状があらわれることがあります。貧血をきっかけに検査を行い、大腸がんが見つかるケースも少なくありません。
また、大腸がんが進行すると、食事量が変わっていないのに体重が減少することがあります。短期間での急激な体重減少は、体のどこかで異変が起きていることを知らせるサインかもしれません。そのほか、腹痛や腹部膨満感にともなって吐き気や嘔吐がみられる場合もあります。こうした全身症状が続く場合は、単なる体調不良と考えず、医療機関での相談を検討しましょう。
初期の大腸がんは自分では異変に気づきにくいのが特徴です。だからこそ、日頃から体調の変化に目を向けておくことが重要になります。
| 便のチェック | |
| 便に血が混じることがある(鮮血、または黒っぽい血) | |
| 便の表面に粘り気のある液体(粘液)がついている | |
| 最近、便が以前より明らかに細くなった(鉛筆状便) | |
| 便の色が全体的に黒っぽくなった | |
| お通じのチェック | |
| 出し切った感じがせず、すぐにトイレに行きたくなる | |
| 便秘と下痢を繰り返すようになった | |
| お腹が張っている感じや、ガスが溜まっている感覚が強い | |
| 全身・その他のチェック | |
| 理由もなく短期間で体重が大きく減少した | |
| 貧血、めまいがある | |
| おなかを触ると「しこり」がある | |
| 家族に大腸がんを経験した人がいる | |
| 40歳以上で、一度も大腸内視鏡検査を受けたことがない | |
関連記事:大腸がんの初期症状とは?気づきにくい兆候と早期発見のために知っておきたいこと

便の色だけで出血している正確な場所や原因を特定することはできませんが、血便の色は出血部位を推測するための手がかりになることがあります。

鮮やかな赤色の血が便に付いたり混じったりしている場合、比較的肛門に近い直腸やS状結腸から出血している可能性が考えられます。「痔だろう」と自己判断されがちな症状ですが、直腸がんやS状結腸がんでもみられることがあるため、痔と決めつけずに受診することが重要です。
赤黒い血液が混じっている場合は、より奥の大腸から出血している可能性があります。出血してから排出されるまでに時間が経過すると、血液は暗い色へ変化します。出血量が少ない場合には目立ちにくいため、便の色に違和感があるときは注意が必要です。
黒く、粘り気のある便は「タール便」と呼ばれます。典型的な黒色便は、胃や十二指腸など、上部消化管からの出血でよくみられることが知られていますが、大腸の右側からの出血でも黒っぽく見えることがあります。
血液だけでなく粘液が混じる便は、大腸がんの一部でもみられますが、一般的には潰瘍性大腸炎などの炎症性の腸疾患でよくみられる所見です。いずれにせよ、健康な便ではみられない変化のため、原因を自己判断せずに医療機関で検査を受けることが重要です。

おなかが張る、おならの回数が増えるといった症状は、食事内容の変化や一時的な便秘などでもよく起こります。しかし、これまでに経験したことがないような張りや違和感が続く場合や、血便や便の形の変化などほかの症状を伴う場合には、注意が必要です。
大腸の内側に腫瘍ができて便やガスの通り道が狭くなると、腸内の流れが滞りやすくなり、おなかの張りやガスの増加を感じることがあります。
腸内では、腸内細菌の働きによって常にガスが発生しています。通常、このガスは腸のぜん動運動によって移動しておならとして排出されますが、腸内に腫瘍が存在するとガスがスムーズに排出されにくくなります。その結果、行き場を失ったガスが腸内にとどまることで、腹部が張るような不快感が続くことがあります。
近年、腸内細菌と大腸がんの関連についてさまざまな研究が進んでいます。腸内に腫瘍が存在すると、腸内環境のバランスが崩れやすくなり、悪玉菌が増殖しやすくなる可能性があります。
悪玉菌が増殖すると、アンモニアや硫化水素などを含むガスが発生しやすくなり、これが腐敗臭の原因となることがあります。
おならの臭いは、食事内容や腸内細菌の状態などによって大きく左右されます。大腸がんがある場合、腸内環境の変化や便の停滞によって、ガスの臭いがこれまでよりも強くなることがあります。
おならの臭いの変化だけでがんを診断することはできませんが、血便、繰り返す便秘や下痢など、他の症状が重なっている場合には、より注意深く変化をみる必要があります。
食べ過ぎや一時的な便秘によるガス溜まりであれば、便やガスを排出することで不快感が軽減し、時間とともに自然と改善するのが一般的です。一方で、大腸がんが関係している場合には、おなかの張りや違和感がなかなか消えず、徐々に強くなることもあります。ガスや便が出てもスッキリしない状態が続いたり、痛みを伴ったりする場合は注意が必要です。
大腸はおなかの中を右から左へとぐるりと回るように走行しており、がんができる場所によって、症状のあらわれ方にも違いがあります。

右側の大腸(盲腸、上行結腸、横行結腸など)では、便がまだ比較的やわらかい状態で通過しています。腸の内腔も左側より広いため、腫瘍ができてもすぐに通過障害が起きにくいとされています。そのため、便が細くなるといった排便の変化は目立ちにくく、自覚症状がないまま進行することも少なくありません。
気づくきっかけとしては、慢性的な貧血や、原因がはっきりしない体重減少などがあります。がんが大きくなると、おなかを触ったときにしこりとして感じられる場合もあります。
左側の大腸(下行結腸・S状結腸、直腸など)では、水分が吸収されて便がより固形に近い状態になっています。腸の内腔も右側より狭いため、腫瘍によって少しでも通り道が狭くなると、排便に影響が出やすくなります。
便が細くなる、便秘と下痢を繰り返す、排便後もすっきりしないといった症状は、左側のがんで比較的よくみられます。また、血便として便の異常に気づきやすいのも左側のがんの特徴です。

排便後にトイレットペーパーに血がついていると、「痔だろう」と考えてしまう方は少なくありません。しかし、出血の見た目だけで、それが痔によるものか大腸がんによるものかを正確に判断することはできません。
過去に大腸内視鏡検査(大腸カメラ)で痔と診断されたことがある方でも、1年以上経っている場合や症状に変化がある場合は、新たな病気が隠れている可能性が考えられます。出血が繰り返し続く場合や、便が細くなる、便秘や下痢を繰り返すといった排便習慣の変化がある場合、さらに腹痛や体重減少、貧血などの症状が重なる場合には、できるだけ早めに消化器内科を受診することが大切です。

大腸がん検診として、一般的な健康診断や自治体の検診で広く実施されているのが「便潜血検査」です。自宅で便を採取するだけで済み、身体的負担も少ないことから、大腸がんの可能性のある人を見つけるためのスクリーニング検査として活用されています。
便潜血検査は、便に含まれる微量の血液を検出する検査です。そのため、出血していない早期のがんや小さなポリープは見つからない可能性があります。また、大腸がんによる出血は常に起きているわけではないため、採便のタイミングで出血していなければ、がんがあっても「陰性」と判定されることがあります。
便潜血検査は大腸がんの約7割(※1)を発見できるとされており、死亡率を減少させる科学的根拠が確立されています。しかし、あくまで「入り口の検査」であるため、便が細い、便秘と下痢を繰り返す、おなかの張りが続く、などの症状がある場合には、検査結果に関わらず、より詳しい検査を検討することが重要です。
出典:国立がん研究センター がん情報サービス『大腸がん検診について』より
大腸がんの確定診断には、大腸内視鏡検査などの精密検査が必要です。通常は、便潜血検査で陽性となった場合や、何らかの自覚症状がある場合に内視鏡検査へ進みます。
一方で、「症状がないので検査を受けるきっかけがない」「内視鏡検査に不安がある」と感じている方も少なくありません。こうした背景から、身体への負担が少ない方法でがんリスクを把握する検査にも関心が集まっています。そのひとつが、唾液からがんリスクを評価する「サリバチェッカー」です。
サリバチェッカーは、慶應義塾大学先端生命科学研究所の研究成果をもとに開発された検査キットで、唾液中の代謝物を解析することで、がんのリスクを評価します。自宅で唾液を採取するだけで実施できるため、身体的負担が少なく、内視鏡検査に抵抗がある方でも検討しやすい方法です。また、大腸がんだけでなく、肺がん、胃がん、膵臓がん、乳がん、口腔がんの6種のがんリスクを同時に評価できる点も利便性のひとつです。
この検査は診断を行うものではありませんが、リスクが高いと判定された場合には、早い段階で医療機関を受診するきっかけになりますし、リスクが低い場合でも、自身の健康状態を見直すきっかけになります。
大腸がんは、早期に発見して適切な治療を行えば、高い確率で治癒が期待できるがんです。だからこそ、定期的な便潜血検査に加え、必要に応じて自分に合ったリスク評価を取り入れることが、将来の安心につながります。「検診は受けているけれど、もっと積極的に自分のリスクを知りたい」「内視鏡検査を受けるべきか迷っている」という方にとって、唾液によるリスク検査は、新たな一歩を踏み出す選択肢のひとつになるかもしれません。