大腸がんは日本人のがん罹患率で上位に位置し、年々増加傾向にあります。特に注目すべきは、従来は高齢者に多いとされていた大腸がんが、近年では若い世代にも増えている点です。2025年には、大腸がんの発生に関わる「コリバクチン毒素」による遺伝子変異のメカニズムが新たに明らかになり、予防や早期発見の重要性がさらに注目されています。大腸がんは初期段階では自覚症状がほとんどないため、気づいたときには進行しているケースも少なくありません。
本記事では、大腸がんの初期症状や見逃しやすいサイン、早期発見のための検査方法について詳しく解説します。排便習慣の変化や血便など、気になる症状がある方、家族に大腸がんの既往がある方にとって、早期発見のための判断材料となる内容です。
目次

大腸がんは日本人に多いがんの一つであり、罹患率(病気にかかる人の割合)は年々増加しています。国立がん研究センターのデータによると、大腸がんは男性、女性ともに2番目に多いがんです。かつては高齢者の病気と考えられていましたが、近年では40代、50代の働き盛りの世代にも増えており、若年化の傾向が見られます。
大腸がんが増えている背景には、複数の要因が関係しています。
それぞれ説明します。
日本人の食生活が欧米化したことで、大腸がんのリスクが高まっています。特に以下の3つの変化が影響しています。
牛肉や豚肉などの赤身肉、ハムやソーセージなどの加工肉の摂取量が増えました。世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関は、加工肉を「発がん性がある」と分類しており、赤身肉も「おそらく発がん性がある」としています。これらの肉類に含まれる成分が腸内で分解される際、発がん物質が生成される可能性が指摘されています。
動物性脂質を多く摂ると、胆汁酸(脂肪の消化を助ける物質)の分泌が増えます。胆汁酸は腸内細菌によって二次胆汁酸に変換されますが、この二次胆汁酸が大腸の粘膜を刺激し、がんの発生を促進する可能性があります。
野菜や海藻、きのこ類などに含まれる食物繊維の摂取量が減少しています。食物繊維は便の量を増やし、腸内の有害物質を吸着して排出する働きがあります。食物繊維が不足すると、有害物質が腸内に長く留まり、大腸がんのリスクが高まります。
現代人の生活習慣も、大腸がんの増加に関係しています。
デスクワークの増加や自動車での移動が増えたことで、日常的な運動量が減少しています。運動不足は腸の動きを鈍らせ、便秘を引き起こします。便が腸内に長く留まると、発がん物質が腸粘膜に接触する時間が長くなり、がんのリスクが高まります。また、運動不足による肥満は、体内の慢性的な炎症を引き起こし、がんの発生を促進します。
日本人は体質的にアルコールによる大腸がんリスクが高まりやすいと言われています。アルコールが体内で分解される際に生成されるアセトアルデヒドという物質には発がん性があり、特にアルコールを分解する酵素の働きが弱い体質の方は、リスクがさらに高まります。日本人の約半数は、この酵素の働きが弱いか、ほとんど働かない体質とされています。
日本の高齢化も、大腸がんの罹患者数増加に影響しています。大腸がんは40代から増え始め、50代で急増する傾向があります。60代、70代ではさらに罹患率が高くなります。
年齢とともに細胞の遺伝子に変異が蓄積され、がん化しやすくなります。また、免疫機能の低下により、がん細胞を排除する力が弱まることも、高齢者に大腸がんが多い理由の一つです。社会全体の高齢化が進むにつれ、大腸がんの罹患者数も増加しています。
大腸がんは早期発見できれば治る可能性が高い病気ですが、日本の大腸がん検診の受診率は約40〜50%程度と、欧米諸国と比べて低い水準にあります。
健康診断の「便潜血検査(便に血液が混じっていないかを調べる検査)」で異常(陽性)が出ても、大腸カメラ(内視鏡検査)を受けない方が少なくありません。大腸カメラには、いくつかのハードルがあります。
これらの理由から、「経過観察」という名の放置が続くことで、発見された時には進行しているケースが少なくありません。便潜血陽性は大腸がんやポリープ(良性の腫瘍)からの出血を示唆する重要なサインです。健康診断で異常を指摘された場合は、必ず精密検査を受けることが大切です。
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健康診断の判定結果については、「健康診断の判定結果の見方|A〜E判定の意味と「要再検査」への対処法」で詳しく解説しています。

大腸がんの最大の特徴は、初期段階では自覚症状がほとんどないという点です。早期の大腸がんは、大腸の粘膜の表面にできた小さなポリープや、粘膜に留まるがんの状態です。この段階では痛みや出血などの症状が現れにくく、健康診断の便潜血検査や、偶然受けた内視鏡検査で発見されるケースが大半です。
症状が現れ始めるのは、がんがある程度の大きさになってからです。しかし、症状が出始めた段階でも、多くの人が「一時的なものだろう」と見逃してしまいがちです。
大腸がんの初期〜中期に現れる症状は、日常的によくある体調不良と似ているため、見逃されやすいです。以下のような症状が続く場合は注意が必要です。
今まで規則的だった排便のリズムが乱れ、下痢と便秘を繰り返すようになります。これは、がんによって腸の動きが不規則になったり、腸の通り道が狭くなったりするためです。ただし、ストレスや食生活の乱れでも同様の症状が起こるため、「一時的なものだろう」と思われやすいです。
がんが大きくなると、腸の通り道が狭くなります。その結果、便が細くなったり、平たくなったりします。鉛筆のように細い便が続く場合は、大腸がんの可能性を考える必要があります。
排便後にすっきりせず、まだ便が残っている感じがします。特に直腸がん(肛門に近い部分にできるがん)では、この症状が現れやすいです。がんそのものを便と錯覚して、残便感を感じることがあります。
がんによって腸の動きが悪くなると、ガスや便が溜まりやすくなり、お腹が張った感じや違和感が続きます。ただし、これも便秘や食べ過ぎなど、日常的な原因で起こることが多いため、見逃されやすい症状です。
これらの症状は、「一時的なら問題ない」と思われやすい点が特徴です。しかし、2週間以上続く場合や、症状が悪化する場合は、医療機関を受診することをおすすめします。
繰り返す下痢や便秘は、大腸がんの症状に当てはまります。ただし大腸がんに限らず、過敏性大腸炎や他の病気でも見られることが多いです。そのため、こうした症状だけで大腸がんかどうかを判断するのは難しいと言えるでしょう。
気になる症状がある場合は、無理に自己判断せず、早めに医療機関で検査を受けることをおすすめします。

大腸がんは、初期段階で発見できれば治療の効果が高く、予後の良いがんと言われています。しかし、早期では自覚症状がほとんどなく、気づきにくい病気です。そのため、定期的な検査が推奨されますが、普段の生活の中で気をつけるべきポイントもあります。
例えば、以下のような症状がある場合は注意が必要です。
上記の症状が当てはまるか、セルフチェックをすると良いでしょう。複数の項目が当てはまる場合は、早めに医療機関を受診してください。
大腸がんになると、がんによって腸が狭くなるため、便が細くなったり便秘になったりします。また、大腸の水分を吸収する機能が低下すると、下痢が起こる場合もあります。腸の内部は常に同じ状態ではないため何かの拍子で、便秘と下痢を繰り返すことも珍しくありません。
長期間便が腸内に留まると、水分が吸収されて硬くなり、コロコロとした便になることがあります。また、排便後に「残便感」があるのも大腸がんの症状の一つです。
血便は、大腸がんからの出血で便に血液が混ざることで起こります。血便の色は、がんのある場所によって変わるのが特徴です。
肛門に遠い場所(右側結腸)では、便が大腸内を移動する間に酸化などで黒っぽくなり、肛門に近い場所(左側結腸と直腸)では血液の色が出て赤くなります。赤い便は痔だと思い込んで放置されやすいので注意が必要です。
がんになると今までと同じように食べたり、運動したりしても体重が増えず、どんどん筋肉が落ちて痩せてしまうことがあります。
主な原因は、がん細胞から分泌される「炎症性サイトカイン」というタンパク質です。この物質が脳に作用すると食欲が低下し、脂肪や筋肉を分解させることで体重が減少します。
大腸がんによる痛みは、がんが腸の通り道を妨げられることで起こることが多いです。この痛みは、腸の動きに合わせて現れたり治まったりを繰り返すのが特徴です。
さらに、がんが大きくなると腸が狭くなり、お腹の張りや違和感を覚えることがあります。放置しておくと腸が完全に詰まり、腸閉塞になる可能性もあるため注意しましょう。
大腸がんが進行すると、がんからの慢性的な出血が原因で貧血が起こることがあります。この場合、めまいや疲れやすさなどの症状が続くのが特徴です。さらに、がんの影響で食欲が落ちて十分な栄養が摂れなくなることも、貧血の原因となることがあります。

大腸がんは、早期発見できれば治る可能性が非常に高いがんです。がんの進行度によって、治療方法や予後(病気の経過や見通し)が大きく変わります。
大腸がんの予後は、発見された時期によって大きく異なります。国立がん研究センターのデータによると、大腸がんの5年相対生存率(がんと診断されてから5年後に生存している割合)は、ステージによって以下のように変わります。
※参考:国立がん研究センター がん対策研究所「大腸がんファクトシート2024」
ステージIの早期がんは、がんが大腸の粘膜や粘膜下層に留まっている状態です。この段階で発見できれば、内視鏡的切除(お腹を切らずに内視鏡で取り除く治療)だけで済む場合も多く、体への負担が少ない治療で完治が期待できます。
一方、ステージIVまで進行すると、がんが肝臓や肺など他の臓器に転移している状態です。この段階では、手術に加えて抗がん剤治療が必要になり、治療期間も長くなります。生存率も大幅に低下します。
早期と進行期での治療負担・予後の違いは明確です。早期がんなら入院期間は数日程度で、仕事や日常生活への影響も最小限に抑えられます。一方、進行がんの場合は、大きな手術が必要になり、入院期間も長くなります。術後の回復にも時間がかかり、生活の質(QOL)が大きく低下する可能性があります。
「症状がなくても検査が重要」というメッセージは、大腸がん対策の基本です。自覚症状がない段階で検査を受けることが、早期発見の鍵となります。
大腸がんの検査を受けるべきタイミングは、症状の有無だけでなく、いくつかの要因を総合的に判断する必要があります。以下のチェックポイントに当てはまる方は、医療機関での検査を検討してください。
便通の変化や血便、腹痛などの症状が2週間以上続く場合は、必ず受診しましょう。「様子を見よう」と思っているうちに、がんが進行する可能性があります。症状が悪化している場合は、2週間を待たずに早めに受診してください。
大腸がんは40代から増え始めます。40歳を過ぎたら、症状がなくても定期的に検査を受けることをおすすめします。特に50歳以上の方は、毎年の便潜血検査や、5年に1度の大腸内視鏡検査が推奨されています。
両親や兄弟姉妹に大腸がんの既往がある方は、リスクが2〜3倍高くなるとされています。家族に大腸がん患者がいる場合は、40歳になる前から定期的な検査を始めることが望ましいです。また、家族性大腸腺腫症(FAP)やリンチ症候群など、遺伝性の大腸がんの場合は、さらに若い年齢から定期的な検査が必要になります。
これらのチェックポイントに複数当てはまる方は、特に注意が必要です。早めに医療機関を受診し、医師に相談してください。
大腸がんは、初期段階では自覚症状がほとんどないため、定期的な検査が非常に重要です。健康診断の便潜血検査で異常が見つかった場合は、必ず精密検査(大腸カメラ)を受けましょう。「痛そう」「恥ずかしい」といった理由で先延ばしにすると、がんの発見が遅れる可能性があります。
「大腸カメラはハードルが高い」「仕事が忙しくて病院に行けない」という方には、自宅でできるリスクチェックという選択肢もあります。従来の便潜血検査は、がんやポリープからの出血を検出する検査ですが、出血していない段階では異常を見つけられません。
一方、唾液を用いたリスク検査は、がん細胞から分泌される「代謝物」を測定します。細胞レベルの変化を数値化するため、画像検査や便潜血検査では判断がつかない時期でも、リスクを評価できる可能性があります。
サリバチェッカーは、唾液を採取するだけで大腸がんを含む6つのがん(膵臓、乳、胃、大腸、肺、口腔)のリスクをまとめてチェックできる検査です。痛みや被曝の心配がなく、自宅で好きな時に採取できるため、忙しい方でも無理なく続けられます。
定期的な健康診断と合わせて、リスク検査を活用すると、より安心して健康管理ができます。気になる症状がある方、家族に大腸がんの既往がある方、定期的なリスクチェックを検討している方は、サリバチェッカーの活用を検討してみてください。