株式会社サリバテック

肺がんはレントゲンに映らない?見落としリスクや結節影が肺がんである確率について解説

がん

肺がんはレントゲンに映らない?見落としリスクや結節影が肺がんである確率について解説

肺がん検診で胸部レントゲンを受け、「異常なし」と診断されても安心できない場合があります。実は、レントゲン検査だけでは発見が難しい肺がんが存在するのです。心臓や肋骨の陰影に隠れてしまう「死角」があること、初期の小さながんは画像に写りにくいことが主な理由です。

本記事では、なぜレントゲンで見落としが起こるのか、肺に影が見つかった場合にがんである確率はどの程度か、そしてレントゲン以外にどのような検査方法があるのかを、医学の専門知識がない方にも分かりやすく解説します。

肺がんは健康診断でわかる?

健康診断や自治体が行う肺がん検診の主な検査項目は、以下のとおりです。

検査項目目的と特徴限界・注意点
胸部X線検査肺全体にX線を当てて撮影し、白い影(異常陰影)がないかを調べる簡便で広く普及している小さながん(2cm以下)や、心臓、骨(肋骨、鎖骨など)と重なった場所にあるがんは見落とされる可能性がある
喀痰細胞診痰を採取し、その中にがん細胞が混じっていないかを顕微鏡で調べる主に太い気管支に発生するタイプのがん(肺門部のがん)に有効喫煙量が多いなどハイリスクな方に限定して行われることが多い

胸部レントゲン検査には限界があります。2cm以下の小さながんや、心臓、肋骨、鎖骨などと重なった場所にあるがんは見落とされる可能性があるのです。健康診断で「異常なし」と言われても、必ずしもすべての肺がんを発見できているわけではないことを理解しておきましょう。

結節影(けっせつえい)とは

結節影(けっせつえい)とは、主に胸部レントゲン検査やCT検査で見つかる肺の中の異常な影を指す医学用語です。肺の中に丸い形や楕円形の小さな塊のような陰影として映ります。

結節影が見つかったからといって、すぐに肺がんと決まるわけではありません。実際には、過去に肺炎を起こした跡や良性の腫瘍、肉芽腫(にくげしゅ)と呼ばれる炎症の痕跡など、がんではない良性の病変であることが大部分を占めます。肉芽腫とは、体が細菌やウイルスなどの異物と戦った後に残る組織の塊のようなもので、結核や真菌(カビ)の感染の痕跡として残ることがあります。

結節影の大きさや形、輪郭がギザギザしているかなめらかかといった特徴から、良性の可能性が高いか悪性(がん)の可能性が高いかをある程度推測できますが、最終的には精密検査を受けて判断する必要があります。

結節影が肺がんである確率はどのくらい?

結節影が実際に肺がんである確率は、どのような状況で見つかったか、影の大きさ、患者さんの背景によって大きく異なりますが、全体で見ると非常に低いと言えます。胸部レントゲン検査やCT検査で結節影が見つかっても、その大部分はがんではない良性の病変です。

リスクが高い要因(悪性の可能性↑)リスクが低い要因(良性の可能性↑)
喫煙歴がある(特にヘビースモーカー)非喫煙者である
年齢が高い(高齢である)比較的若年である
結節影の大きさが比較的大きい(例:2cm以上)結節影の大きさが非常に小さい(例:5mm以下)
輪郭が不規則でギザギザしている輪郭が滑らかで、はっきりしている
CT検査で増大が確認された(前回より大きくなっている)長期間(2年以上)大きさや形に変化がない
過去にがんの治療歴がある(転移の可能性)

結節影を指摘された場合は、確率が低いとはいえ、良性かがんかを判断するために精密検査を受けることが大切です。自己判断せず、医師の指示に従って適切な経過観察や追加検査を受けましょう。

肺がんがレントゲンで見落としされる理由

胸部レントゲン検査は肺がん検診の基本となる検査ですが、以下の理由から、がんを早期に発見できない場合があります。これは医師や放射線技師の技術の問題ではなく、レントゲン検査という方法が持つ特性上の限界によるものです。

肺がんがレントゲンで見落とされる主な理由は、以下のとおりです。

  • 臓器や骨による「死角」(重なり)の存在
  • 初期の小さながんは写真ではっきりと捉えることが困難

それぞれ説明します。

臓器や骨による「死角」(重なり)の存在

胸部レントゲン検査は、立体的な人間の胸部をたった1枚の平面画像に映し出す検査方法です。影絵を思い浮かべてみてください。複数の物体が重なると、後ろにある物体の形は見えなくなってしまいます。レントゲン検査も同じ原理です。

胸の中には、心臓、肋骨、鎖骨、背骨、太い血管などがあり、これらもレントゲン写真では白く映ります。もし小さながんがこれらの臓器や骨の真裏に隠れていた場合、がんの影が埋もれて判別できなくなってしまうのです。

たとえば、心臓の真裏や肋骨に重なる位置にがんがあった場合、レントゲン画像では心臓や肋骨も白く映るため、がんの影が隠れてしまいます。肺の中でも、特に心臓の後ろ、横隔膜(肺と腹部を仕切る膜)の近く、肺の最も外側は死角になりやすい場所です。これらの場所にがんが発生すると、レントゲンでは見つけにくくなります。この「死角」の問題は、レントゲン検査の構造上避けられないものであり、医師や技師の技術とは関係なく起こる現象です。

初期の小さながんはX線写真ではっきりと捉えることが困難

レントゲン検査で明確に見つけられるのは、概ね2cm以上の大きさのがんです。それより小さいがん、特に1cm未満の腫瘍はほとんど写真に写りません。レントゲン画像の解像度(どれだけ細かく写せるか)には限界があるため、小さながんは正常な血管や肺の模様と見分けがつきにくいのです。

肺炎などの病気では、レントゲンに濃い白い影がはっきりと映ります。しかし、早期の肺がん、特に「すりガラス結節」と呼ばれるタイプのがんは、ベタッとした白い影ではなく、すりガラス越しに見たようにぼんやりと薄く淡い影にしか映りません。この淡い影は、正常な肺の模様と区別がつきにくく、見落とされやすいのです。

すりガラス結節は、特に肺腺がん(肺がんの一種)の初期に見られることがあります。このタイプのがんは、レントゲン検査では非常に判別しにくく、早期発見という観点からはレントゲン検査だけでは不十分と言えます。

レントゲン以外の肺がん検査方法

肺がんの検査は、大きく分けて2種類あります。1つ目は「スクリーニング検査」で、これは症状がない段階で異常を見つけるためのふるい分け検査です。2つ目は「精密検査・確定診断のための検査」で、異常が見つかった後に詳しく調べる検査です。

レントゲン以外の主な肺がん検査方法は、以下のとおりです。

  • 低線量胸部CT検査
  • 喀痰細胞診
  • 造影CT検査
  • MRI検査
  • PET-CT検査

それぞれ説明します。

低線量胸部CT検査

低線量胸部CT検査は、X線を使って体を薄く輪切りにした写真を何百枚も撮影し、コンピューターで解析する検査です。レントゲンが1枚の平面画像であるのに対し、CT検査は肺の内部を立体的に細かく観察できます。

レントゲンの「死角」がなくなるため、心臓や骨に隠れた場所のがんも発見できます。1cm未満の小さながんや、すりガラス状の淡い影のがんも高い精度で検出可能です。「低線量」という名前の通り、通常のCT検査よりも放射線の量を抑えています。

タバコを長年吸っている方や肺がんのリスクが高い方には、レントゲンよりもCT検査が推奨されています。ただし、レントゲンよりも放射線の量は多く、検診として受けられる病院が限られている、費用がかかる(自費の場合1万円~2万円程度)といったデメリットもあります。

喀痰細胞診

喀痰細胞診(かくたんさいぼうしん)は、咳をした時に出る痰(たん)を採取し、その中にがん細胞が混ざっていないかを顕微鏡で調べる検査です。肺がんが気管支の内側に発生すると、がん細胞が剥がれ落ちて痰に混じることがあります。

主に太い気管支に発生する肺門部(はいもんぶ)のがん、特に扁平上皮がん(へんぺいじょうひがん)という種類のがんを見つけるのに有効です。痛みや放射線被ばくがなく、自宅で痰を採取できる利点があります。

ただし、肺の末梢(外側)に発生する肺腺がん(はいせんがん)という種類のがんは、痰に混じりにくいため検出しにくいという限界があります。

造影CT検査

造影CT検査は、腕の血管から造影剤(ぞうえいざい)という薬を注射し、がん組織やリンパ節などへの血流の違いをはっきりさせて、より詳しく調べる検査です。造影剤を使わない通常のCT検査よりも、がんの広がりや血管との位置関係を正確に把握できます。

肺がんが疑われた場合や、既に肺がんと診断された後に、がんがどの程度進行しているか(ステージ)を判定するために行われます。リンパ節(体の免疫を担う組織)への転移や、他の臓器への転移の有無も確認できるため、治療方針を決める上で重要な検査です。

MRI検査

MRI検査は、磁気と電波を利用して体の内部を撮影する検査で、特に脳や骨への転移の有無を調べる際などに用いられます。放射線を使わないため被ばくの心配がなく、CTでは見えにくい脳や脊髄などの軟らかい組織の詳細な観察に優れています。

肺がんが進行している場合、脳や骨、肝臓などに転移していないかを確認するために実施されます。ただし、肺の内部は空気が多いため、MRIは肺がんそのものを見つける検査としてはあまり使われません。

PET-CT検査

PET-CT検査は、ブドウ糖に似た特殊な薬剤を注射し、がん細胞がブドウ糖を多く取り込む性質を利用して、全身のがんの広がりや転移を一度に調べる検査です。がん細胞は正常な細胞よりも活発に増殖するため、多くのエネルギー(ブドウ糖)を必要とします。

PET-CT検査では、がん細胞が集まっている場所が光って見えるため、目に見えない小さな転移や、予想外の場所の転移も発見できる可能性があります。肺がんがどの程度進行しているか(ステージ)を判定したり、治療後に再発していないかチェックするのに有効です。

ただし、すべてのがんがブドウ糖を多く取り込むわけではなく、炎症でも陽性に出ることがあります。費用が高額(自費の場合10万円程度)で、検査を受けられる病院が限られている点もデメリットです。

肺がんを見つけるにはリスク検査も有用

肺がんの早期発見において、レントゲン検査やCT検査などの画像診断は重要ですが、それだけでは十分とは言えません。画像診断には「死角」があり、小さながんの検出には限界があるためです。

リスク検査は、画像診断とは異なる方法で肺がんの可能性を評価できます。特に「CTを毎年受けるのは金銭的に難しい」「放射線被ばくが気になる」「もっと手軽に自分のリスクを知りたい」という方には、だ液で肺がんのリスクを調べるサリバチェッカーという検査が有用です。

サリバチェッカーは、レントゲンのような画像診断ではないため、物理的な「死角」がありません。だ液を採取するだけなので、注射の痛みや放射線被ばくの心配が一切なく、自宅で簡単に採取できます。さらに、肺がんだけでなく、膵臓がんや胃がんなど、複数のがんリスクを一度にチェックできる点も特徴です。

「レントゲン(画像診断)」と「サリバチェッカー(リスク検査)」、異なる方法を組み合わせることで、がんの見落としリスクを最小限に抑えられます。ご自身の健康を守るために、まずはリスクを知ることから始めませんか。