パープルリボンは、膵臓がんを多くの人に知ってもらうための国際的な活動のシンボルです。紫色のリボンには、病気を治したいという希望と、病気と闘う人たちを応援する気持ちが込められています。また、パープルリボンは女性への暴力をなくそうという運動のシンボルでもあります。
膵臓がんは、初期の段階では症状がほとんど出ないため、見つけるのがとても難しい病気です。しかし、正しい知識を持ち、適切な検査を受けることで、病気の早期発見につながる可能性があるでしょう。この記事では、膵臓がんについて詳しく知りたい方や、病気のリスクが心配な方に向けて、パープルリボン活動の意味から最新の検査方法まで分かりやすく説明します。
パープルリボンとは、膵臓がんを知ってもらい、早期発見を促す目的で使われているシンボルマークです。乳がんのピンクリボン運動と同じように、リボンの形を使って社会に大切なメッセージを伝える世界的な取り組みとなっています。同時に、家庭内暴力(DV)などの女性に対する暴力をなくそうという国際的なキャンペーンのシンボルでもあります。
パープルリボン活動は、乳がんで有名なピンクリボン運動と同じように、リボンの形を使って大切なメッセージを伝える活動です。主に2つの重要な意味があります。
1つ目は「すい臓がんを早く見つけるために定期的に検査を受けましょう」という呼びかけ、2つ目は「すい臓がんの患者さんとその家族を理解し、支援しましょう」というメッセージです。
日本では、2006年にパンキャンジャパン支部という組織ができ、シンポジウム(専門家による講演会)を中心としたパープルリボンキャラバンという活動を全国で展開しています。
また、NPO法人パンキャンジャパンが「パープルリボンウォーク(2014年からパープルストライド)」という歩くイベントを開始し、全国各地で啓発イベントが実施されるようになりました。毎年11月21日は「世界膵臓がんデー」として世界規模での啓発活動が行われ、患者さんや家族、ボランティアが力を合わせて膵臓がんについて多くの人に知ってもらう活動を続けています。
パープルリボンが紫色を使っている理由には、とても深い意味があります。NPO法人パンキャンジャパンのウェブサイトによると、紫は病気を治す力を持つ素晴らしい色で、病気と闘う人たちに勇気と完治への大きな力を与えてくれるとされています。
kまた、パープル(Purple)の最初の文字「P」は、膵臓を意味する英語「pancreas(パンクリアス)」のPを表しているという説もあります。この紫色は、膵臓がんと闘う患者さんやその家族、そして応援する人々にとって希望の象徴となっています。
膵臓がんは、がんの中でも特に治療が難しいとされる病気です。膵臓がんは毎年4万人の人に見つかり、がんによる死亡者数を臓器別に見ると日本で4番目に多い病気となっています。患者数は年々増えており、今では胃がんや大腸がんと大差がない程度まで見られる病気になってきました。しかし、医学が進歩しているにもかかわらず、まだ完全に治る患者さんが少なく、非常に治療が困難ながんとして知られています。
膵臓がんの最大の特徴は、早く見つけることがとても難しいということです。膵臓は胃の後ろにあり、体の奥深いところに位置するため、がんが小さいうちは体に変化を感じることがほとんどありません。何か症状が現れた時には、すでに病気がかなり進んでしまっているケースが多く、早期発見が非常に困難です。
膵臓がんの90%は、膵液(すいえき)という消化を助ける液体が通る膵管(すいかん)という管から発生します。病気が見つかる時には、既に膵臓の中にしこりができている場合がほとんどです。膵臓がんは初期の段階では症状がほとんど出ず、周りの血管やリンパ管などを通って他の臓器に転移しやすいという特徴もあります。
がんが進行すると、以下のような症状が現れることがあります。ただし、これらの症状は他の病気でも見られることがあるため、注意が必要です。
膵臓の周りにある神経が圧迫されることで、みぞおちや背中に鈍い痛みや重い感じが続きます。膵臓は胃の後ろ、大きな血管や背骨の前にある背中に近い臓器です。そのため、膵がんによる炎症や、膵がん自体が背中側に広がっていく場合には、背中の痛みが現れることがあります。
がんが胆管(たんかん)という胆汁の通り道を圧迫することで、胆汁の流れが悪くなり、皮膚や白目の部分が黄色くなる症状です。特に十二指腸(じゅうにしちょう)に近い膵頭部(すいとうぶ)という場所にがんができた場合、がんによって胆管がふさがれ、胆汁が外に出なくなることで黄疸が起こることがあります。
がん細胞が増えることや、膵臓の働きが悪くなって消化を助ける酵素(こうそ)が足りなくなることで、栄養をうまく吸収できなくなります。その結果、急激に体重が減ったり、食べ物を食べたくなくなったりする現象が起こります。
膵臓の働きが悪くなると、血糖値をコントロールするホルモン(インスリンなど)の分泌が不十分になります。その結果、糖尿病を新しく発症したり、もともと持っていた糖尿病が急に悪化したりすることがあります。
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膵臓がんの原因は完全には分かっていませんが、病気になるリスクを高めることが知られているいくつかの要因があります。
タバコを吸う人は、吸わない人と比べて膵臓がんになるリスクが約1.5倍から2倍に高くなると言われています。喫煙は比較的高い危険因子として知られています。
特に大人になってから糖尿病になった場合や、もともとあった糖尿病が急に悪化した場合、膵臓がんのリスクが高くなるとされています。糖尿病の持病がある人は、膵臓がんを発症するリスクが約2倍となるデータもあります。
膵臓に長い間炎症が続く慢性膵炎の人は、そうでない人と比べてリスクが10倍以上になると言われています。膵臓の慢性的な炎症が、がんになるリスクを大幅に高めることが分かっています。
血のつながった家族(特に親や兄弟姉妹)に膵臓がんの患者さんが2人以上いる場合、発症リスクが高くなります。また、遺伝性膵炎や、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(BRCA1/2遺伝子変異)など、特定の遺伝子変異を持つ人もリスクが高いことがわかっています。
特に若い頃からの肥満は膵臓がんのリスクを高めます。BMI(体格指数)が30 kg/m²以上の人が膵臓がんを発症するリスクは3.5倍といわれ、女性でBMIが40以上になると発症リスクは2.8倍まで上昇します。
お酒を飲みすぎると、慢性膵炎の原因となり、間接的に膵臓がんのリスクを高める可能性があります。
膵臓がんは、見つかった時にすでに周りの血管やリンパ節、他の臓器に転移していることが多く、手術で完全に取り除くのが難しい場合があります。主な治療法は以下のとおりです。
膵臓がんを根本的に治すための最も重要な治療法です。がんの進行の程度によって、部分的に切除する方法から全部を摘出する方法まで、様々な手術があります。早期発見できれば、膵臓の機能を残せる可能性もあります。
抗がん剤を使った治療で、手術の前後に補助的に用いられたり、手術ができない進行したがんに対する主要な治療として実施されたりします。最近では、個人の特性に合わせた薬の選択も可能になってきています。
がん細胞を破壊するために放射線を照射する治療法で、薬物療法と一緒に使われることが多くあります。
膵臓がんを早く見つけるのが難しい理由は、膵臓の位置と病気の性質にあります。膵臓がんは、初期の段階では症状がほとんどなく、がんが小さいうちは画像検査(お腹の超音波検査など)でも見つけにくいというのが現状です。
現在、多くの人が定期的に受ける人間ドックで、膵臓がんを発見するためのお腹の超音波検査は、2cm以下では50~60%、1cm以下では30%程度しか見つけられません。早期がんの発見は極めて困難といえるでしょう。また、初期の段階では、CEA、CA19-9などの腫瘍マーカー(がんの目印となる物質)の値が高くなることも少ないため、従来の血液検査による早期発見にも限界があります。
一方、リスク検査は、血液や尿などの体液を調べることで、画像では写らない小さな変化や、がんになるリスクを示すバイオマーカー(体の中の指標)を見つける革新的な方法です。リスク検査は、がんの確定診断を行うものではなく、「膵臓がんになるリスクが高い人」を特定するために使われる検査方法です。
血液や尿を使ったリスク検査は、従来の腫瘍マーカーや画像診断と組み合わせることで、診断の正確性を向上させる可能性があります。最新の研究では、がんの種類によってマイクロRNA(遺伝子の情報を伝える小さな物質)の量が健康な人と違うことが明らかになり、マイクロRNAは、がんのバイオマーカーとして注目されています。
パープルリボンは、膵臓がんの早期発見・早期診断・早期治療の重要性を社会に広く伝える国際的な啓発活動のシンボルです。同時に、女性に対する暴力根絶を訴える重要な運動のシンボルでもあります。
膵臓がんは「静かな殺し屋」とも呼ばれるほど早期発見が困難な病気です。初期症状がほとんどなく、症状が現れた時にはすでに進行している場合が多いため、定期的な健康チェックと適切なリスク評価が極めて重要になります。
従来の検査方法には限界があるため、新しいアプローチとして唾液を使ったがんリスク検査が注目されています。サリバチェッカーのような検査方法は、数滴の唾液で膵臓がんを含む複数のがんのリスクを一度に調べることができ、体に負担をかけません。「まずはリスクを把握することから始めよう」という最初の一歩として、このような新しい検査方法も有効な選択肢の一つといえるでしょう。