「食事制限も運動も、毎日これほど頑張っているのに……」ある時期を境に、これまで安定していた血糖値が急上昇し始めたり、処方薬が効かなくなってきたりしたことに、言いようのない不安を感じてはいませんか。
糖尿病の悪化は、単なる「生活習慣の乱れ」だけが原因とは限りません。実は数値の跳ね上がりは、沈黙の臓器と呼ばれる膵臓が発している「重大なSOS」である可能性があるのです。実際、膵臓がん患者の多くに、診断の1〜2年前から血糖値の急変(糖尿病の新規発症や急激なコントロール不良)が見られることがわかっています。
この記事では、糖尿病と膵臓がんの密接な関係を紐解き、「血糖値はどのくらい変動するのか?」という疑問から、手遅れになる前に検討すべき「専門医への相談」や「最新のリスク検査」までを詳しく解説します。
目次

糖尿病が短期間のうちに悪化する背景には、食生活や運動習慣の変化だけでは説明できないケースがあります。その代表的な原因のひとつが、膵臓がんです。
膵臓は、私たちの体の中で「消化」と「血糖調整」という2つの役割を同時にこなす非常に珍しい臓器です。
膵臓の大部分(約95%以上)を占める細胞では、強力な消化液である「膵液」が作られています。
膵臓がんの多くはこの「膵管」から発生するため、がんができると消化液の通り道が滞るだけでなく、隣接するホルモン機能にも影響を及ぼします。
外分泌細胞の間に、島のように点在する「ランゲルハンス島(膵島)」という組織があります。ここでは、血液中に直接ホルモンを分泌して、体内のバランスを一定に保っています。
血糖値を上げるホルモンは他の臓器からも分泌されますが、血糖値を下げるインスリンは膵臓でしか作ることができません。 そのため、膵臓がダメージを受けると、インスリンの供給がストップしたり、効き目が悪くなったりして、血糖値が急激に上昇してしまうのです。
一般的な糖尿病(1型・2型)とは異なり、何らかの基礎疾患や薬剤などが原因で発症する糖尿病を「二次性糖尿病」と呼びます。膵臓がんによって引き起こされる糖尿病はこれに該当し、専門的には「膵性糖尿病」とも呼ばれます。
二次性糖尿病は、基礎疾患を治療することで改善する場合が多いですが、長期に及ぶとインスリン分泌能が低下し、治療後も糖尿病が残ることがあります。そのため、急な血糖値の変動が見られた場合は、単なる糖尿病の悪化と捉えず、背後に膵臓がんが隠れていないかを確認することが早期発見の重要なポイントとなります。
膵臓がんにおいて糖尿病が発症・悪化するメカニズムには、主に「インスリン分泌の低下」と「インスリン抵抗性」の2つが関与していると考えられています。
二次性糖尿病ではインスリンに拮抗するホルモンや物質が過剰になることで、血糖を下げるインスリンの働きが阻害されることがあります。膵臓がんにおいても、がんに関連する炎症などがインスリン抵抗性を引き起こす一因と考えられており、体が十分なインスリンを作ろうとしても効果を発揮しにくい状態(高インスリン血症)に陥ることがあります。
物理的なメカニズムとして、膵臓にできたがん細胞が膵管(膵液の通り道)を圧迫・閉塞させることが挙げられます。膵管が詰まると内部の圧力が高まり、周囲の組織が障害を受けます。これにより、インスリンを作り出す「β細胞」もダメージを受け、インスリンの分泌自体ができなくなってしまいます。

膵臓がん患者のなかには、がんと診断される前後の時期に、糖尿病を新たに発症したり、血糖値のコントロールが急激に悪化したりする人が一定数存在します。
膵臓がんは、初期には自覚症状がほとんどない一方で、血糖値の異常が比較的早い段階でみられることがあると報告されています。海外の大規模な研究では、膵臓がんと診断された人の一部において、診断の半年から2年ほど前に、糖尿病の新規発症や血糖コントロールの急激な悪化が確認されました。
これまで安定していた血糖値が、生活習慣や治療内容に大きな変化がないにもかかわらず、血糖値が不安定になりはじめた場合には、膵臓の病気が関与している可能性も考えられるのです。
血糖値を評価する指標のひとつに、過去1~2か月の平均的な血糖値を反映する「HbA1c」があります。健康な人ではおおむね4.6~6.2%が基準範囲とされ、6.5%以上では糖尿病が疑われます。
膵臓がんにともなう血糖値の変化について、明確な基準値が定められているわけではありません。ただし、複数の臨床研究や疫学調査において、膵臓がんの診断前の比較的短い期間に血糖値やHbA1cが大幅に上昇していたケースが報告されています。

次のような変化がみられる場合は、膵臓の異常が背景にある可能性も考えられます。いずれも見逃さず、注意深く経過を確認することが重要です。
食事内容や運動習慣に大きな変化がないにもかかわらず、これまで安定していた血糖値やHbA1cが短期間で上昇する場合、膵臓の機能低下や構造的な異常が関係している可能性があります。とくに、治療や生活改善を続けているにもかかわらず数値が悪化する場合には、慎重な評価が必要とされます。
一般的に、高血糖の状態が続くと体重は増えやすい傾向があります。しかし、膵臓がんが進行すると、消化液の分泌が低下し、食物を十分に消化・吸収できなくなることがあります。その結果、しっかり食事をとっていても体重が減少するケースがみられます。血糖値の上昇と体重減少が同時に起きている場合には、とくに注意が必要なサインです。
50歳以降にはじめて糖尿病と診断された場合には、生活習慣の影響だけでなく、膵臓の病気が背景にある可能性も考慮する必要があります。膵臓がんは年齢とともに発症率が高くなる傾向があり、短期間で血糖値が大きく上昇した場合や、治療の効果を感じにくい場合には、医療機関での相談や検査がすすめられます。

膵臓がんは、ほかのがんと比べて早期発見が難しいとされています。その理由には、膵臓という臓器の特徴が大きく関係しています。
膵臓は胃の裏側に位置する臓器で、異常があっても見つかりにくいという特徴があります。健康診断で行われる腹部超音波検査(エコー)では確認しづらい部位が多く、腫瘍マーカーも早期の膵臓がんでは上昇しない場合があります。
そのため、腹痛や背中の痛み、食欲不振、急な体重減少などの症状があらわれた時点では、すでに膵臓がんが進行しているケースも少なくありません。
糖尿病は、膵臓がんの発症リスク要因のひとつです。糖尿病がある人は、そうでない人に比べて膵臓がんの発症リスクが約2倍高いとされています。そのため、糖尿病のある人は血糖値の管理に加えて、膵臓の状態にも注意を払い、必要に応じて検査を受けることが重要です。

血液検査や症状などから膵臓がんが疑われる場合には、CTやMRIなどの精密検査が行われます。しかし、明らかな異常がみられない場合には、精密検査に進まないまま経過観察となることも少なくありません。こうした状況のなかで、膵臓がんのリスクをこれまでとは別の視点から評価する方法として注目されているのが「サリバチェッカー」です。
サリバチェッカーは、慶應義塾大学先端生命科学研究所の研究成果をもとに開発された検査キットで、唾液中の代謝物を解析することで、がんのリスクを評価します。採血や画像検査のような身体的負担がなく、自宅で実施できる点が特徴です。医療機関でCTやMRIなどの精密検査を受ける前段階のスクリーニングとして利用しやすい検査といえます。
膵臓がんを含む複数のがんリスクを同時にチェックできる点は、サリバチェッカーの大きな利点です。この検査では、1回の唾液採取で膵臓がんのほか、肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、口腔がんなど、複数のがん種のリスクを一度に評価できます。
通常、それぞれのがんを調べるには異なる検査を個別に受ける必要があり、時間的にも身体的にも負担が大きくなりますが、サリバチェッカーなら自宅で簡単に実施でき、包括的な健康チェックが可能です。とくに膵臓がんのような早期発見が難しいがんと、他の主要ながんを同時にスクリーニングできることで、見逃しのリスクを減らし、効率的な健康管理の第一歩として活用できます。
検査結果を専門医への「相談のきっかけ」として活用できる点も、サリバチェッカーの重要なメリットです。「血糖値が気になるけれど、いきなり病院で精密検査を受けるのは不安」と感じている方にとって、まず自宅で手軽にリスクを確認できることは、医療機関を受診する心理的なハードルを下げてくれます。
血糖値の急激な変化は、体が発している重要なサインのひとつです。一時的な乱れと決めつけるのではなく、その背景にどのような体の変化が起きているのかを考えることが、健康を守ることにつながります。
糖尿病の悪化が気になる方や、これまでとは違う血糖値の動きに不安を感じている方は、従来の検診や検査の他にサリバチェッカーのようながんリスク検査も選択肢のひとつとして、膵臓の状態を意識した行動を早めに取ることが大切です。