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がんのステージ(病期)はいくつまで?分類の決め方や治療方法について解説

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がんのステージ(病期)はいくつまで?分類の決め方や治療方法について解説

がんは日本人の死亡原因の第1位となっており、決して他人事ではない病気です。しかし「がんのステージ(病期)」については、実際に病気と向き合うまで詳しく知る機会が少ないのが現状です。ステージは治療法や予後を判断するうえで重要な指標になります。

もし自分や家族ががんと診断された際、医師からステージの話しをされたときに、「ステージが高いと治療は厳しいのか」「再発のリスクはどうなるのか」など、不安や疑問を抱えるケースもあるかもしれません。

そこで本記事では、がんのステージの基本的な分類や決め方、さらにグレードとの違いについて分かりやすく解説します。また、大腸がんを例にステージごとの治療法の概要もまとめました。早期発見に役立つリスク検査についても紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

がんのステージ(病期)とは

がんにはさまざまな種類があり、病状や患者さんの状態によって治療法や予後は大きく異なります。そのため、がんの「進行度合い」を表すステージ(病期)が設定されることが一般的です。これは、以下の主な2つの項目を総合的に判断し、病期を分類したものです。

  • がんがどこまで広がっているか
  • 転移があるか、どの範囲におよんでいるか

ステージの考え方や基準は、がんの種類によって若干異なる場合があるため、同じステージでも治療法や予後が一律ではない点に注意が必要です。たとえば消化器系のがん、呼吸器系のがん、女性特有のがんなど、それぞれ進行度や治療選択の考え方に違いがある場合があります。

ここでは、がんのステージ分類について解説します。

がんのステージ分類

一般的に、がんのステージは、がんの広がり方や転移の有無などを総合的に判断し、0期からIV期までの5段階に分類されます。

ステージⅣ期まで進行すると、根治的治療が難しくなるケースが多いです。しかし、治療法や新薬の進歩により、症状のコントロールや延命を図ることが可能になる場合があります。

ステージ0がん細胞が上皮内(粘膜のもっとも表層部分)にのみ存在し、リンパ節への転移がない状態です。手術や内視鏡治療など、早期治療によって完治が期待できる可能性が非常に高い時期とされています。
ステージⅠがんの範囲が限られており、臓器の中だけ、あるいはリンパ節転移が一部で認められる程度の状態です。比較的早期とされ、外科的切除や内視鏡治療などにより治癒を目指せる場合が多くあります。
ステージⅡがんの大きさや浸潤範囲がやや広がり、リンパ節への転移が確認されることがある段階です。治療においては外科的切除が中心となりますが、術後の再発リスク低減のために補助化学療法を組み合わせることもあります。
ステージⅢがんが臓器の外側や周辺組織へさらに広がり、複数のリンパ節に転移がある場合が多い状態です。治療としては、手術に加え化学療法や放射線療法などを組み合わせる「集学的治療」を行うことが一般的です。
ステージⅣがんが他の臓器(遠隔転移)にまで及んでいる進行期です。根治が難しいケースが増えますが、がん治療の進歩により、薬物療法や放射線療法を組み合わせた延命・症状緩和が期待できることもあります。

このように「がん」と言っても、ステージによって治療の方法や目的が大きく異なってきます。

ステージ分類の判定方法

がんのステージは、以下のような複数の検査結果を総合して判定されます。

  1. 画像検査
  • CT(コンピューター断層撮影)
  • MRI(磁気共鳴画像)
  • PET検査 など

これらの画像検査を通して、がんの大きさや位置、リンパ節や臓器への転移の有無を確認します。

  1. 内視鏡検査
  • 胃カメラ(上部消化管内視鏡)
  • 大腸カメラ(下部消化管内視鏡) など

消化管に発生したがんでは、実際に内視鏡で内部を観察することで、病変の広がりや深さ、出血や潰瘍の有無などを直接確認できます。

  1. 病理検査
  • 生検(がんと疑われる組織を一部採取する)
  • 手術検体(手術で切除した臓器や組織)

採取した組織を顕微鏡で観察し、がん細胞の種類・悪性度や転移の可能性を詳しく調べます。

これらの検査で得られた情報をもとに、がんがどの段階にあるのかを総合的に判断し、最終的なステージが決定されます。診断当初に「ステージIIが疑われる」と言われていても、手術や追加検査を経てステージIIIに修正されるケースなども少なくありません。

がんのステージとグレードの違い

がんの進行度合いを表す指標としては、「ステージ(病期)」のほかに「グレード」という言葉もよく使われます。ステージは「がんがどの程度の範囲に広がっているか」を表すのに対し、グレードは「がん細胞そのものの性質(悪性度)」を示すのが大きな違いです。

同じステージでも、がん細胞の増殖スピードや転移のしやすさは異なる場合があり、そこを評価する目安が「グレード」と考えると分かりやすいでしょう。

がんのステージの決め方

ステージは、主に以下の3つの要素を組み合わせた「TNM分類」という国際的な基準によって判断されます。

  • T(Tumor)

原発腫瘍の大きさや、臓器の壁をどこまで深く浸潤しているかを評価します。たとえば「T1」「T2」「T3」のように段階が設定され、数値が大きいほど腫瘍が深く広がっていることを意味します。

  • N(Node)

リンパ節への転移の有無や、転移している場合にはどれだけの範囲に転移しているかを評価します。たとえば「N0」はリンパ節転移がない状態、「N1」はリンパ節転移がある状態といったように分類されます。

  • M(Metastasis)

他の臓器への遠隔転移(肺・肝臓・脳など)があるかどうかを評価します。遠隔転移がある場合を「M1」、ない場合を「M0」と分類します。

これらのT、N、Mの組み合わせによって、がんが「ステージ0」から「ステージIV」までのどの段階に当てはまるかが決まります。がんの種類や発生部位によって、TやNの細かい定義は異なるため、専門医による総合的な判断が必要です。

がんのグレードの決め方

グレードは「がん細胞がどれくらい悪性か」を示す指標です。具体的には、以下のようなポイントを病理検査(顕微鏡による観察など)で評価します。

  • がん細胞の形や構造が、正常細胞とどれくらい異なるか
  • 増殖スピードや分裂頻度はどの程度か
  • どのくらい組織の分化度合いが保たれているか(がん細胞が元々の臓器や組織の形態を保っているか、あるいはまったく異なる形態か)

また、一般的には「高分化」「中分化」「低分化」という3段階で表されることが多く、以下のように分類します。

  • 高分化:正常な細胞に近い形態で、増殖スピードはゆるやかな傾向
  • 中分化:高分化と低分化の中間程度の性質
  • 低分化:正常な細胞から大きくかけ離れた性質で、増殖が早く悪性度が高い傾向

同じステージでも、がんのグレードが高ければ再発のリスクが上がったり、転移しやすかったりする可能性があるため、治療方針や経過観察の内容にも影響が出てきます。

がんのステージはいつわかる?

一般的に、がんの診断がついた段階で医師はある程度の見立て(「ステージIの可能性が高い」「リンパ節転移があるのでII~IIIあたりかも」など)をします。

しかし最終的なステージが確定するのは、多くの場合手術や追加検査の結果が出そろった後になります。

初回診断時に仮定

がんらしき病変が見つかった場合、まずは画像検査や内視鏡検査、生検などの結果から「おおむねステージ〇くらい」という推測が立てられます。

しかし手術やより精密な検査によって、実際には想定より進んでいるケース(ステージが引き上がる)や、逆に予想よりも軽度だったケース(ステージが引き下がる)もあります。

手術検体の病理検査時に確定

特に病理検査は、切除した臓器やリンパ節を実際に顕微鏡で見て、がんがどこまで浸潤しているか、どの範囲まで転移が及んでいるかを詳細に確認します。

ここで初めて明らかになる事実(より深い浸潤や複数のリンパ節転移 など)により、「最終的なステージ」が確定することが多いです。

ステージ判定まで時間がかかることも

病理検査の結果や追加検査に時間がかかる場合、ステージが確定するまで数週間程度かかることも珍しくありません。また、がんが複雑な場所にある場合は、複数の検査を組み合わせて慎重に判断する必要があります。

がんのステージは「診断されたらすぐに決まる」というよりは、「治療方針を検討する過程で最終的に確定する」というイメージを持っておくとよいでしょう。

ステージ別の主な治療方法:大腸がんの標準治療

がんの種類によってステージごとの治療方針は異なりますが、ここでは大腸がんを例に、各ステージで一般的に行われる治療法の概要を紹介します。

実際には患者さんの年齢や体力、合併症の有無など、様々な要因を考慮しながら治療方針が決定されるため、あくまで目安としてご覧ください。

がんステージ0の治療方法

大腸がんのステージ0は、がん細胞が粘膜層にのみとどまっている「上皮内がん」の段階です。基本的には、内視鏡治療(内視鏡的粘膜切除術: EMRや内視鏡的粘膜下層剥離術: ESDなど)によって、病変を切除します。

内視鏡治療自体は1~2時間程度で終わることが多く、入院期間も数日程度と比較的短期間です。術後の経過が良好なら、早めに退院できるケースがほとんどです。

がんステージⅠの治療方法

ステージⅠでは、がんが大腸の粘膜下層や筋層まで広がっている場合もありますが、リンパ節への転移がほとんどない(あるいはごくわずかな)状態が多いです。治療の中心は外科的手術(大腸切除)で、10日~2週間程度の入院期間が想定されます。

場合によっては腹腔鏡手術が適用され、傷口が小さく、回復が早い可能性も考えられます。リンパ節転移が確認される場合、術後に経過を見ながら補助的に化学療法を検討することがあります。

がんステージⅡの治療方法

ステージⅡになると、がんが大腸壁の深部まで浸潤している可能性が高まりますが、リンパ節への転移が比較的少ない段階です。依然として外科的手術が第一選択となりますが、手術後に再発リスクを下げるための補助化学療法を行うケースが増えます。

手術自体はステージⅠと似た期間ですが、術後の化学療法を数か月単位で行うことが多いため、通院が続く可能性があります。

がんステージⅢの治療方法

ステージⅢでは、複数のリンパ節に転移が認められる段階となり、集学的治療(手術+化学療法+場合によっては放射線療法など)が必要です。

  • 外科的手術:リンパ節郭清(がん細胞が入り込んだリンパ節を切除する処置)を含む大腸切除が基本
  • 化学療法(抗がん剤治療):術前・術後に組み合わせることが多く、再発や転移を抑えることが目的

長期的に薬物治療を行うケースがあり、半年以上にわたる治療プランになることもあります。患者さんの体力や合併症の有無などに応じて治療スケジュールを調整します。

がんステージⅣの治療方法

ステージⅣは、がんが他の臓器(肝臓・肺・骨など)にまで転移している状態です。根治的治療が難しい場合が多いですが、近年は化学療法の進歩により、延命や生活の質(QOL)向上を目指すことができます。

薬物療法(化学療法・分子標的薬など)を中心に、手術や放射線療法、免疫療法などを組み合わせる「集学的治療」を検討します。症状緩和のための緩和ケアも同時に行い、患者さんの負担を軽減することを重視します。

病状や転移先、患者さんの体力によって治療の組み合わせが大きく異なります。長期にわたって治療と経過観察を続けることも多く、医師や医療スタッフとのこまめなコミュニケーションが欠かせません。

大腸がんのステージ別治療は上記のように大まかに分けられますが、患者さん一人ひとりの状態や医療技術の進歩、新薬の登場などによって治療方針は変わってきます。実際には専門医と相談しながら、最適な治療を選択していくことが大切です。

がんのステージに関してよくある質問

がんのステージについて、主に質問されることが多い内容を3つ紹介します。

ステージが上がるとどうなる?

がんのステージが上がるほど、がん細胞がより広い範囲へ浸潤・転移している状態を示します。具体的には以下のような変化・影響が考えられます。

  • 治療の選択肢

ステージが進むと、外科的手術だけでなく化学療法や放射線療法、緩和ケアなどを組み合わせた「集学的治療」が必要になるケースが増えます。

  • 再発・転移のリスク

がん細胞がリンパ節や他の臓器へ転移しやすくなり、完治を目指す治療が難しくなる場合もあります。

  • 治療期間や副作用

複数の治療を同時もしくは段階的に行うため、治療期間が長期化し、薬物治療の副作用リスクが増大する可能性が高まります。

がんのステージを言わないことはある?

医師は通常、患者さんやご家族が治療方針を検討・理解するために「ステージ」を伝えます。しかし状況によっては、患者さんが「知りたくない」という強い意志を示す場合や、心理的負担が大きいと判断される場合などに、患者さん本人の意向を尊重してステージの具体的な数値を伏せることがあります。

また、医師があえてステージを明言しないケースも考えられますが、これは患者さんの生活や精神面への配慮の一環です。ただし、多くの場合は「がんの広がりや治療の方向性」を納得してもらうため、ある程度の進行度合いは伝えられることが一般的です。

がんはいつまでに見つけたら早期発見になる?

がんの種類によって多少の違いはありますが、ステージI程度までに見つけられれば「早期発見」といわれることが多いです。特に「ステージ0(上皮内がん)」や「ステージI」で治療を開始できれば、手術や内視鏡での切除のみで完治が期待できるケースも高くなります。

しかし、がんは早期ほど自覚症状が出にくいのが特徴です。そのため、定期検診やリスク検査を受けて、症状がない段階でも早期発見を目指すことが重要とされています。

がんの早期発見にはリスク検査がおすすめ

がんは早期の段階で発見できるほど、体への負担が少ない治療で完治を期待できる可能性が高まります。特にステージIまでの早期発見であれば、より高い確率で治癒を目指しやすいとされています。しかし、早期がんは自覚症状に乏しいのが一般的です。

そのため、症状がなくても定期的な検診やリスク検査を受け、早めにチェックすることがとても重要です。近年は、手軽にがんリスクを調べられる検査キットも登場しており、その代表例として唾液を使った「サリバチェッカー」があります。

がんの早期発見は、その後の治療選択肢や予後を大きく左右します。定期的な健康診断や人間ドックに加えて、こうしたリスク検査を活用して自分の身体の状態をこまめに把握しておくことが、将来の安心と健康を守ってくれるでしょう。