がんの治療といえば、抗がん剤や手術が一般的でした。しかし「副作用がつらい」「効果に限界がある」といった声も少なくありません。そんな中、患者の身体への負担が少なく、的確にがんを狙う新しい治療法が次々と登場しています。とくに注目されているのが「光免疫療法」と「ウイルス療法」。
この記事では、これら最新のがん治療法の仕組みや効果、対象がんの種類、メリット・デメリットまで、信頼性の高い情報をもとにわかりやすく解説します。抗がん剤以外の治療を検討している方や、家族のがん治療を考えている方は参考にしてみてください。
目次
光免疫療法は、従来の手術療法・化学療法・放射線療法・免疫療法に続く「第5のがん治療法」として世界中で注目されています。この治療法は、がん細胞を選択的に破壊する仕組みを持ち、副作用が少なく効果的であることから、治療の新たな選択肢として期待されています。
それぞれ説明します。
光免疫療法は、がん細胞のみにくっつく特別な抗体薬を体内に投与し、その後に特定の波長の近赤外光を照射することで、薬剤が活性化しがん細胞を破壊する治療法です。
光免疫療法で使用する薬剤が付着した、がん細胞にしか反応しないように設計されており、治療精度が非常に高いのが特徴です。光自体も人体には無害であるため、安心して治療を受けられます。2020年に世界で初めて日本で承認され、2021年に保険適用となった点も見逃せません。
現在、光免疫療法が適用されるのは「切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部がん」に限られています。具体的には、口腔・咽頭・喉頭などの部位に発生するがんが対象です。
ほかの部位にできたがんに対しては、光を十分に当てられないため今のところ有効な治療手段とは言えません。しかし今後の臨床研究によって、頭頸部以外にできたがんへの適用も期待されています。
光免疫療法の最大の利点は、「正常な細胞を傷つけずに、がん細胞だけを選択的に破壊できる点」です。がん細胞が壊れた後には、患者自身の免疫が活性化される「がんワクチン効果」もあるとされています。
手術や抗がん剤に比べて身体への負担が少なく、回復も早いため、生活の質を維持しながら治療できる点も高く評価されています。
一方で、治療直後に光線過敏症の症状が現れるケースがあります。薬剤が光に反応しやすいため、日光に当たると肌が過敏になり、発赤やかゆみが生じる可能性があるからです。
また、現時点では対象が限られていること、設備や技術が限られた医療機関でしか実施できない点も課題です。
ウイルス療法は、がん細胞をターゲットに人工的に改変されたウイルスを使い、がんを攻撃する最先端治療法です。従来の治療法では届きにくかったがん細胞にもアプローチできる可能性があり、新しいがん治療の柱として研究が進んでいます。
それぞれ説明します。
ウイルス療法では、がん細胞だけに感染して増殖するよう遺伝子操作されたウイルス(腫瘍溶解性ウイルス)を患者に投与します。腫瘍溶解(しゅうようようかい)ウイルスは、がん細胞内で増えながら細胞を破壊し、同時に免疫を活性化させてがん全体を攻撃するのが特徴です。
日本で初めて実用化されたのは、東京大学医科学研究所などが研究を進めた「G47Δ(ジーよんじゅうななデルタ)」というウイルス製剤で、先進国初の脳腫瘍に対するウイルス療法製品となります。
現時点での対象は、主に脳腫瘍(特に悪性神経膠腫)や、再発性の固形がんです。固形がんとは、血液がん以外の臓器や組織に生じる腫瘍の総称です。
2021年には、G47Δが世界で初めて脳腫瘍への治療薬として条件付きで承認されました。また動物実験レベルではあるものの、あらゆる固形がんに有効であることが明らかになってきているため、今後は他部位にできたがんへの適用も見込まれています。
ウイルス療法の大きなメリットは、副作用が比較的少ないことです。正常な細胞には影響を及ぼさないようにウイルスが設計されており、従来の化学療法と比較して身体への負担が軽くなります。
ただし、治療を受けて数年単位の長い期間が過ぎてからの副作用は、臨床試験や臨床での使用を通して明らかになる場合があるため、動向に注視が必要です。
ウイルス療法には、運用面と治療効果面で主に2つのデメリット(課題)があります。ウイルス療法はがん細胞を直接破壊するだけでなく免疫システムも活性化させる画期的な方法ですが、実用化には次のハードルが存在します。
「最新の治療法だから良いに違いない」と決めつけずに、デメリットや治療課題を考慮しながら治療を選択する必要があると言えるでしょう。
2025年も、がんの治療はどんどん進化しています。たとえば 「免疫チェックポイント阻害薬」 という、体の免疫のブレーキを外してがん細胞を破壊する薬が様々ながんに使われるようになってきました。
また、がんの原因となる遺伝子を調べ、その人に合った薬を選ぶ 「がんゲノム医療」 も進んでいます。 リキッドバイオプシー という、血液でがんの状態を調べる方法も開発され、手術後の再発を防ぐためにどんな治療をすれば良いか、より正確に判断できるようになってきました。
これら新しい治療法により、これまで治りにくかったがんが治療できるようになったり、手術をしなくてもがんを小さくできたりする可能性が広がっています。
がんの治療が進化しても、やはり「早期発見・早期治療」が最も重要です。最新治療の効果を十分に発揮させるためにも、がんリスクを定期的にチェックする習慣が大切だと言われています。
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